きみと3秒見つめ合えたなら
「先輩、ここ座って。立ってるの、不安でしょ?」
電車に乗った桐谷くんが座席を指差す。
思わぬ優しさにびっくりして桐谷くんを見る。
「オレが守るって言ったでしょ。」
かぁーっと体中が熱くなる。
「ありがとう」と言って私は座席に座った。桐谷くんは私の前で吊革を持って立っている。
私はずっとうつむいたまま。
昨日のできごとは、一度思い出すと、消したくても、なかなか頭から離れない。
「先輩?」
桐谷くんの声が頭の上から聞こえる。
「先輩の答え、まだ聞いてないんだけど。」
ドキっとして声が出ない。
『次は湊ー』
次は乗り換えだ。
どうしよう。
やっぱり一緒の車両に乗らなきゃ、変だよね。だけど...桐谷くんへの答えをどうしていいか分からなくて、息苦しくて。人混みに紛れて、そっと桐谷くんから離れようか....。
そんなことを考えていた。
『湊ー。お乗り換えの方は3番ホームへ...』
「先輩、乗り換えだから...」
と言われて、私が桐谷くんを見上げると同時に、桐谷くんは昨日と同じ様に私の手首をつかんで引っ張った。
私はやや桐谷くんに引っ張られながら、彼の後ろを歩き、電車を乗り換えた。
桐谷くんと私は無言だった。
行きと違って電車は空いていた。
「絶対、逃げると思ったから...」
そう言って座席に並んで座ると、ようやく桐谷くんは手を離した。
バレちゃったか。
「もう、逃げられない」と、分かった私は、「でも、どうしていいか」が、分からなくて、さっきと同様、私はうつむいた。
私たちはまた無言になった。
昨日、ベンチに並んで座った時のことがまた思い出される。
「もう1回、キスする?」
無言だった桐谷くんが、突然、私の顔を覗きこんで小声で言った。
「え...」
思わず絶句。
私は頭の中を桐谷くんに見られてるような気がして。
どう答えたかも、記憶にないくらいに焦っていた。
焦る私に桐谷くんはお構いなしに続ける。
「焦ってるのも、かわいい。」
もうヤバい。
桐谷くんと一緒にいると、私は彼のペースに惹き込まれていく。
「返事は?先輩、オレの事、好きになってくれる?」
うん、って言ってしまいそうになる。
でも、本当にそれで大丈夫?
一瞬、正気になる私は、チラッと早瀬くんのことが脳裏をよぎる。
「何か不安?オレ、先輩のことちゃんと守るから、大丈夫。」
うんって言ってしまおうか。
桐谷くんの優しさが、私を、素直にさせる。
『春日野道ー。
左側のドアが開きますー。』
「あ、降りなきゃ。」
結局、考えがまとまらない私は無言のまま座っていたのだが、とうとう降車駅についてしまった。
私は「じゃあ」とだけ桐谷くんに伝えて、電車を足早に降りた。
ホームに降り立ち、2.3歩歩いたとき、背負っていたリュックが背中にピッタリとくっついた。
あれ?と思ったとき、
目の前には、誰かの組まれた腕があった。
それはきゅっと私を後ろから優しく抱きしめた桐谷くんの腕だった。
そして先輩桐谷くんが耳元でささやく。
「また、先輩逃げるから。ゆっくりでいいからオレの事、考えて。」
さっと胸の前の手を解き、桐谷くんは電車に駆け戻った。
振り返った時にはもう電車は発車し始めていて、桐谷くんを見ることはできなかった。
こんなドラマみたいなシチュエーションってある?
桐谷くんに抱きしめられて、囁かれた私を思い返すと身震いした。
ヤバい。
今日に関わらず、昨日のキスといい、シチュエーションだけで、もう桐谷くんのことしか考えられなくなっている。
恋愛上級者はいつもこんなことをして、ターゲットを落としているのだろうか。
すぐに家に帰る気になれなくて、私はホームのベンチに腰を降ろした。
電車に乗った桐谷くんが座席を指差す。
思わぬ優しさにびっくりして桐谷くんを見る。
「オレが守るって言ったでしょ。」
かぁーっと体中が熱くなる。
「ありがとう」と言って私は座席に座った。桐谷くんは私の前で吊革を持って立っている。
私はずっとうつむいたまま。
昨日のできごとは、一度思い出すと、消したくても、なかなか頭から離れない。
「先輩?」
桐谷くんの声が頭の上から聞こえる。
「先輩の答え、まだ聞いてないんだけど。」
ドキっとして声が出ない。
『次は湊ー』
次は乗り換えだ。
どうしよう。
やっぱり一緒の車両に乗らなきゃ、変だよね。だけど...桐谷くんへの答えをどうしていいか分からなくて、息苦しくて。人混みに紛れて、そっと桐谷くんから離れようか....。
そんなことを考えていた。
『湊ー。お乗り換えの方は3番ホームへ...』
「先輩、乗り換えだから...」
と言われて、私が桐谷くんを見上げると同時に、桐谷くんは昨日と同じ様に私の手首をつかんで引っ張った。
私はやや桐谷くんに引っ張られながら、彼の後ろを歩き、電車を乗り換えた。
桐谷くんと私は無言だった。
行きと違って電車は空いていた。
「絶対、逃げると思ったから...」
そう言って座席に並んで座ると、ようやく桐谷くんは手を離した。
バレちゃったか。
「もう、逃げられない」と、分かった私は、「でも、どうしていいか」が、分からなくて、さっきと同様、私はうつむいた。
私たちはまた無言になった。
昨日、ベンチに並んで座った時のことがまた思い出される。
「もう1回、キスする?」
無言だった桐谷くんが、突然、私の顔を覗きこんで小声で言った。
「え...」
思わず絶句。
私は頭の中を桐谷くんに見られてるような気がして。
どう答えたかも、記憶にないくらいに焦っていた。
焦る私に桐谷くんはお構いなしに続ける。
「焦ってるのも、かわいい。」
もうヤバい。
桐谷くんと一緒にいると、私は彼のペースに惹き込まれていく。
「返事は?先輩、オレの事、好きになってくれる?」
うん、って言ってしまいそうになる。
でも、本当にそれで大丈夫?
一瞬、正気になる私は、チラッと早瀬くんのことが脳裏をよぎる。
「何か不安?オレ、先輩のことちゃんと守るから、大丈夫。」
うんって言ってしまおうか。
桐谷くんの優しさが、私を、素直にさせる。
『春日野道ー。
左側のドアが開きますー。』
「あ、降りなきゃ。」
結局、考えがまとまらない私は無言のまま座っていたのだが、とうとう降車駅についてしまった。
私は「じゃあ」とだけ桐谷くんに伝えて、電車を足早に降りた。
ホームに降り立ち、2.3歩歩いたとき、背負っていたリュックが背中にピッタリとくっついた。
あれ?と思ったとき、
目の前には、誰かの組まれた腕があった。
それはきゅっと私を後ろから優しく抱きしめた桐谷くんの腕だった。
そして先輩桐谷くんが耳元でささやく。
「また、先輩逃げるから。ゆっくりでいいからオレの事、考えて。」
さっと胸の前の手を解き、桐谷くんは電車に駆け戻った。
振り返った時にはもう電車は発車し始めていて、桐谷くんを見ることはできなかった。
こんなドラマみたいなシチュエーションってある?
桐谷くんに抱きしめられて、囁かれた私を思い返すと身震いした。
ヤバい。
今日に関わらず、昨日のキスといい、シチュエーションだけで、もう桐谷くんのことしか考えられなくなっている。
恋愛上級者はいつもこんなことをして、ターゲットを落としているのだろうか。
すぐに家に帰る気になれなくて、私はホームのベンチに腰を降ろした。