エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
【ゆずりは】で正社員として雇ってもらって、もう三ヵ月になる。すっかり仕事にも慣れた。

 本当なら一般企業で会社勤めをするようなビジョンを、大学時代には描いていたし、実際一年ほどはそうして過ごしていたのに、なにがどうなったか。

 人生は波乱万丈である。

 色々とあって、住み慣れた東京を離れて埼玉の奥地で独り暮らしをし、カフェ店員として働いている現在だ。

 そんな梓がてきぱきと三番テーブルを片付け、セッティングも終わりそうになったところへ、ちりん、ちりんとドアベルが鳴った。お客さんだ。

「いらっしゃいませー! 何名様ですか?」

 もう終わりかけていたのだ、梓はすぐに入り口のほうへ向かった。

 入ってきたのは老齢に差し掛かった男性だった。

「一人だよ」

 彼は紳士的な印象に見える、かぶっていた帽子を取って答えた。

 梓はそれににこっと笑い、窓際の二人掛け席を示す。

「かしこまりました! 窓際のお席が空いております。そちらへどうぞ!」

 そちらへ歩いていく彼を見送りながら、梓は厨房へ向かった。

 まずおしぼりとお冷を用意して、オーダー用のタブレット端末を持って行って……。

 すぐに接客モードに入った梓。

 働くのは楽しかった。人生の予定にはなかったこととはいえ、カフェの仕事は向いていたのかもしれない。

 人見知りではないし、働くのは苦でないし、さっきのようにお客さんに喜んでもらえたら、自分も嬉しくなってしまう。

 この仕事をじゅうぶん楽しんでいたといえるだろう。

 梓の世界のほとんどを占めているカフェの日々。

 平和な日々だったけれど。

 ある日、その平和な日常は突然、一変した。
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