エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
 きっと仕事向けの声だ、固めの声で、丁寧な言い方だった。

 梓はあのときスマホと同時に番号もなにもかも変えてしまったから、番号で梓とはわからなかっただろう。

「え、えと……、梓、です……」

 梓はおずおずと切り出した。

 数秒の沈黙があった。

 なんとなく息を呑んだような気配が、電話越しに伝わってくるような気がする。

『……梓。電話くれて、ありがとう』

 数秒のあと、和臣がそう言った。

 言われたのはそれだけだったのに、その言葉で梓は何故か。

 本当に何故だろうか。

 緊張がすぅっと引いていくのを感じたのだ。

 勿論、なくなったわけではない。

 でも、飛び出しそうにどきどきするほどではなくなった。

 落ち着いて、とくとくと、速めではあるが、常に近い鼓動になってくる。
< 99 / 327 >

この作品をシェア

pagetop