【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 パチパチとその長いまつ毛が、何度も瞬くのをランティスは、フワフワする気持ちで見つめていた。
 そもそも、ランティスが笑うなんて、メルシアに初めて出会ったあの日から、メルシアに関することだけだったに違いない。

(私の……勘違い)

 そのことにホッとすると同時に、やっぱりモヤモヤした気持ちが晴れないままのメルシア。
 この気持ちの理由を探すとしたら、たぶん一つしかない。

「……狼姿であろうと、人間の姿であろうと、私にとってはあまり関係なくて」
「…………」
「どんな姿のランティス様でもいいから、ほかの人より近くにいたいみたいです」
「っ、……。それなら、そばにいられるために力を尽くそう」

 あの日みたいに、指先に落ちた口づけは、どこか遠慮がちで、それでいて、よくできたとほめられているようにメルシアには感じた。

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