【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
ランティスは、御者に指示を出す。
敵に囲まれていない今なら、ランティスが抑えている間に、逃げ切れるはずだ。
「させない。依頼者に、彼女を連れてくるように、頼まれているんだ」
次の瞬間、手綱を切られた馬だけが、走り出す。馬車を取り残して。
「……っ」
「そんなに青ざめて、どうしたの? 別に俺なんて、相手にならないほど、強いでしょう」
ランティスは、熱さで荒くなりつつある呼吸を整えた。やるしかないようだ。
「……耐えろ」
この熱に、取り込まれてしまえば、ランティスの姿は狼へと変わる。
「まだ、ダメだ」
すでに、限界を超えて、燃え盛るような熱を持った体。知らずに、額から汗が滴り落ちた。