【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
その時、治癒院の入り口が騒がしくなる。
「…………え?」
目の前には、ここ一週間姿を見ることも叶わなかった、元婚約者がいた。
「ランティス様…………?」
「――――約束を果たしに来た」
「は?」
グイッと手首をつかまれて、立ち上がらされる。
一瞬そのまま、抱き寄せられると思ったのは、メルシアの自意識過剰だったのだろう。
そのまま、今度は優しい力で、手を引かれた。
「……あの」
「治癒院には、午後からの半休を申し入れた。大丈夫、ほかの人間を派遣した。勤務の穴はあけていない」
「え?」
「――――行こう」
何が起こったのか理解が追い付かないまま、それでも、手が繋がれていることが嬉しくて、メルシアは黙ったままランティスに手を引かれる。