【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
道行く人が、二人を振り返る。
メルシアは、治癒院の制服姿のままだ。白いフリルのついたエプロンと、細い水色のストライプのワンピース。
一方のランティスは、式典の帰りだったのだろうか。長いマントをなびかせ、装飾の多い騎士服を着用している。
ちぐはぐで、釣り合わない二人だとメルシアは思っているが、たぶん道行く人にとっては、騎士と治癒院の乙女の物語の一幕のように見えただろう。
(あわわ……。素敵すぎる)
ランティスは、こちらを見もせず、速足で街を通り過ぎていく。
息が切れて、体力がそれほどないメルシアが限界になりかけたころ、二人はフェイアード侯爵邸についた。
「はぁ、はぁ……。ランティス様? どういうことですか」
「……すまない、あまり残された時間がない」
何か大事な用事から、抜け出してきたのだろうか。
そんなに慌てるほど時間がないのに、メルシアをここまで連れてきたランティスの行動に、メルシアは首をかしげるしかない。