【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「あの?」
「約束したから。うちのオオカ……。ゴホンッ。犬にたまに会いたいと言っただろう?」
「えっ、あの」
「待っていても、会いに来ないから、迎えに来た」
あんな約束、もちろん無効だと思って諦めていたのに。
メルシアは思わず、花が綻ぶような笑顔を見せる。
「うれしいです! ありがとうございます」
「――――っ、俺は約束は守る」
いつもお茶会をしていた庭園に、いつものように用意されたかわいらしいスイーツとティーセット。
まるで、婚約破棄なんてなかったみたいだ。
「……メルシア。もしよかったら、いつでも来てくれないか?」
「え……。でも、私は」
眉をなぜか寄せて、困ったかのように笑うランティスから、メルシアは目が離せない。
(いつでも来ていいなんて、そんな社交辞令……。どうして、婚約破棄したのに)
いや、いつでも来ていいなんて、婚約者だった時にすら言われたことがない。
これは一体どういうことなのかと、メルシアは混乱した。