【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
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あの日、ランティスと別れて、ひとしきりラティのモフモフを堪能したメルシアは、元気を取り戻していた。
「心配していたのよ? なんだか、元気がなかったから」
「ごめんね……。ちょっと、いろいろあって」
吹っ切ることなんてできないと、メルシアは思う。
だって、本当にランティスは素敵だから。
しかも、婚約者のお茶会での冷たい雰囲気が嘘のように、ランティスは優しかったから。
「――――いろいろって、聞いても」
その時、再び治癒院入り口がざわめいた。
なんとなく、察するものがある。そう、たぶんあの人が来たのだ、とメルシアは思う。
「メルシア!」
「ランティス様……」
なぜか、ランティスは、再び治癒院を訪れた。
しかも、治癒院に併設されている孤児院の子どもたちのために、たくさんのお菓子を抱えて。
「元気がない時は、婚約者様に癒してもらうといいわ」
「え? あの……」
慌てたメルシアと「いつも婚約者がお世話になっています」と、なぜか挨拶をするランティス。
(え? 元婚約者の間違いではないの?)