【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
治癒院同僚、マチルダは、豊かな黒髪を揺らしてほほ笑んだ。
「……うん。マチルダ、実はね」
たぶん、優しいランティスのことだ、メルシアに恥をかかせないために、婚約者のふりをしてくれたに違いない。
メルシアが、実はランティスとは婚約破棄をしたと伝えようとしたときに、足元にモフモフの感触が擦り寄って来た。
「あら、この犬……入ってきてしまったのね?」
メルシアの足元に擦り寄っていたのは、ラティだった。
たぶん、主人であるランティスについてきてしまったのだろう。
「知り合いの犬なの……」
「あら、連れて行ってあげたほうがいいわ。幸い今日は空いているし、たまには有休を消化しなさいよ」
「ありがとう。そうさせてもらっていい?」
幸い、治癒院は空いている。
メルシアは、たまりすぎている有休を消化することに決めた。