国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 そんなジェシカの姿を見送ると、フローラはすぐさまアダムに呼び出された。恐らく次の配属の話だろうと思われる。アダムの執務室に行くと、彼の他にノルトとブレナン、そしてクリスまで揃っていた。
 そして、クリスの隣に座るように促されるのはいつものことだ。
「フローラ。ジェシカ様付きの護衛騎士としてその任務を全うしてくれた。ここで、礼を言わせてもらう」
「はい」
 アダムの言葉にフローラは返事をした。
「それで、君の次の配属先なのだが」
 魔導士団団長のノルトまでいる、ということは、もしかして魔導士団という話も出ているのだろうか。
 フローラが聖人(きよら)であることは、一月前のあの事件で関係者には知られてしまっている。それでも、その処遇に変わりがなかったのは何故だろうかと、フローラは思っていた。
「ブレナンの元で魔法騎士として、活躍して欲しい。いまだに、国境では魔獣に襲われたという話が多いからな」
「え」
「何か、不満か?」
「いえ。その……。あ、はい。頑張ります」
 誰も彼女が聖人(きよら)であることに触れてこない。今までと同じように扱ってくれる。その事実が無かったかのように。
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