国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 きっと、フローラの知らないところでそういった話にでもなったのだろうか。それとも、ここにいるメンバー以外は彼女が聖人であることに気付いていないのだろうか。
 アダムはフローラのその言葉を聞くと満足そうに頷いた。
「まあ。あれ、だ」
 ノルトが先を奪う。
「俺たちとしては、フローラ嬢をぜひとも魔導士団にと思っていた。だがな、君が魔導士としてこちら側に来ると、だ。この色ボケクリスが仕事をしなくなるのでは、ということを懸念したわけだ。だったら、君たちを同じ職場に配属するのは危険だということになり、やはりフローラ嬢は騎士団所属のままのほうがいいという結論に至った」
 このクリスの上司は部下のことをよく理解しているようだ。
「私としては、一日中、四六時中、フローラと共に時間を過ごし、身体を重ね合わせることができた方がいいと主張したのですが」
 クリスの主張の仕方が少し間違っていると思ったのだが、恐らくそう思っているのはフローラだけではないはず。
「うおっほん」
 わざとらしく咳払いをしたノルト。
「まあ、そういうことだ」
「フローラ。私もそろそろ引退を考えているからね。今のうちに君にいろいろと仕事を教えておきたい」
 ブレナンの口から飛び出た引退という言葉。その言葉に目を丸くしたフローラであるが、彼の年を考えるとそれも妥当なところなのかもしれない。
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