月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
「……念の為、石の数は少なめにしましょうか。あまり詳しく占おうとすると、例え新月でも妨害されるかもしれないわ」

 イロナはティナの「運命値」が高く、神に愛されているために占いが出来ないと思っているようだ。ティナ自身にそんな自覚は全く無いが、イロナが言うと妙な説得力がある。

「……そうなんですね。じゃあ、私の捜し物が見付かって、やりたいことが成功するかどうか占って貰えますか?」

「あら、恋占いじゃなくていいの? 「えっ?!」……なんてね、フフ、冗談よ。じゃあ、知りたいことを思い浮かべながら、ここから石を取ってくれる?」

 イロナにからかわれたティナは、赤面しながらも月下草のことを頭に浮かべながら石を選んだ。

「一つ目は右に置いて、二つ目は左に置いてくれる? 右は「対策」で、左は「結果」を表すのよ」

 イロナに言われた通り、ティナは石を選んでテーブルに置いた。

「……」

 ティナが選んだ石をじっと見ながら、イロナは何かを考えているようだ。石に刻まれた古代アルカナ文字の意味をリーディングしているのだろう。

 占って貰う前はどんな結果でも受け止めるつもりだったが、実際にイロナが石をリーディングしているのを見て、彼女の初めて見る真剣な顔に、ティナの緊張はどんどん増していく。

(うわ〜〜! どんな結果が出たんだろう……。でも結果が悪くても対策がわかるんだから有り難いよね)
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