月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
焦燥
──王都ブライトクロイツの中心にある王宮にて。
第二王子が帰還したと知った貴族が、連日王宮に押し寄せては第二王子に謁見を求めていた。その対応に追われた官僚たちが、あまりの忙しさに悲鳴をあげている。
そんな騒がしい王宮であったが、逆に閣僚が集まる会議室は静寂に包まれていた。
長く重厚で豪華なテーブルには、この国の中枢を担う人物たちが集まっていたが、今は誰もが憔悴した表情を浮かべている。
そんな重苦しい空気の中、会議室の扉がノックされ、憲兵団団長が入室してきた。
「失礼します」
「おお……! 待っておったぞ!」
「それで、どうだ見付かったか?!」
「王都中に人員を送りましたからな。流石に発見できたのでは?」
団長を待っていた閣僚たちは、良い報告が聞けるだろうとワクワクしている。
しかしその期待を裏切るかのように、憲兵団団長は静かに首を横に振った。
「……残念ながら、未だ目的の人物の発見には至っておりません」
「……っ、一体どういうことだ?! 王都中を隈無く探したのだろうな?!」