月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 そうして何事もなく街道を進み、日が暮れようとする頃、ティナ達は街道から少し離れた場所で野営することにした。

 遂にベルトルドが準備してくれた野営道具の出番がやって来た、とティナはワクワクしながら魔法鞄を漁る。

 テントにマット、ランタンに毛布、テーブルと椅子に調理器具と食材、食器まで、どれも高級品が用意されていた。
 ティナも一度はリストを確認したものの、その用意周到さには改めて驚かされる。

「おうおう、随分良い装備を揃えてんなぁ。もしかしてティナは貴族の嬢ちゃんか?」

 モルガンも野営道具を見て驚いている。
 商人の目利きで、その品質の良さを一瞬で見定めたようだ。

「い、いえ! 違います! これはベルトルドさんが……」

「んん? ああ、ベルトルドさんが用意したのか。そりゃ良い装備になるわなぁ」

 ティナの言葉に、モルガンは持ち前の察しの良さでその意味を理解したようだ。
 王都のギルド長であるベルトルドが用意した装備なら、このレベルが当然なのだろう。

 取り敢えずティナたちはタープを張るために地面を整地する。
 ある程度石を取り除くとタープを設営し、テントを組み立てマットを敷いて寝床を作った。ちなみにテントの入口はちゃんとタープに向けている。
 寝床の準備が終わったらタープの下にテーブルや椅子をセッティングし、少し離れたところに調理場を作る。
 テントやタープの風下に焚火台を配置すれば、野営の準備は完了だ。

 旅慣れたモルガンや器用なトールのお陰で、野営の設営はあっという間に終わることが出来た。

 野営を心待ちにしていたティナは、設営を手伝おうとしたものの、男二人の手際の良さにただ見守ることしか出来ず、何となく負けた気になったのだった。
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