巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

56 熾天


「闇のモノは聖なる力で殲滅させる。お前、俺が誰だか忘れたのか?」


 お爺ちゃんが首から取り出したのは、銀の台座に複雑な紋様が描かれ、紫色の魔石がはめ込まれているペンダントだった。


「そ……っ、それはっ?! <熾天>の──!?」


 ペンダントに見覚えがあるのか、トルスティ大司教が大きく目を見開いて驚いている。


『神の聖名において 熾天の封印退けん 死滅の穢れを祓う力よ 我に加護を与え給え』


 お爺ちゃんが<聖具>の起動言語を唱えると、ペンダントに刻まれた文様が光を放ちながら浮かび上がった。

 光の文様に呼応するかのように魔石が紫色に輝いたかと思うと、紫色の光が剣の形に姿を変える。


「使いたくなかったが仕方ねぇっ!! 『堕天せし者に 裁きの力をっ!』」


 お爺ちゃんの剣が紫電を纏い、バザロフ司教だったものを一刀のもとに斬り伏せる。


 <穢れし者>だったバザロフ司教の身体が、声なき悲鳴を上げながらボロボロと崩れ落ちていく。


 騎士団の人達が何千何百と切りつけてもなお、倒せなかった<穢れし者>が呆気なく消滅していく様子に、私は<聖具>の凄さを実感する。
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