巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
そんな事を考えながら神殿本部の周りを歩いていると、誰かに呼ばれたような気がして立ち止まる。
「……?」
辺りを見渡してみたけれど誰もおらず、気のせいかな、と思ったところで気が付いた。
「……あれ……? ここどこ……?」
私は神殿本部の外壁に沿って歩いていた筈なのに、気がつくと綺麗に手入れされている庭園のようなところにいた。
「……え? ええ? なんで……」
さっきまで石造りの外壁があったのに、今は色とりどりの季節の花が咲いている花壇がある。
「……夢?」
商隊に同行させて貰ったとは言え、ろくに眠ることが出来なかったから、もしかすると歩いている途中で力尽きて眠ってしまったのだろうか。
(今までどんなに疲れていても、一度もそんな事無かったのに……)
自分では気づかない内に疲れが溜まっていたのかもしれない。実際、肉体的にも精神的にも一杯一杯なんだと思う。
それにしても凄くリアルな夢だ。日差しの暖かさや風にのって香ってくる花の匂いがやけにリアルで、まるで現実世界のようだ。
(もしこのまま目覚めなかったらどうしよう……)