ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい

「この着物は大叔母が若い頃に着ていたものなの。着ているところを見て欲しかったのよ……」
「そうかよ」

 灯至はモゴモゴと言い訳を続ける粧子を問答無用で抱き上げた。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。

「え!?あ!!お、おお、下ろしてっ!!」

 突然地面から足を離され、粧子は行儀悪くジタバタと足掻いた。
 
「大人しくしておけ。着物なんて着てくる方が悪い。墓場で転んで頭でも打ったら縁起が悪すぎる!!」

 灯至の言うことはもっともだった。しかし、それとこれとは別!!

 恥ずかしい……っ!!

 恥ずかしさのあまり顔から火が噴き出るんじゃないかと思った。
 よく晴れた春の日とあって、墓参り客は少なくない。すれ違うたびにギョッとされ、粧子は居た堪れなくなり、灯至の腕の中で身を縮めた。
 狼狽する粧子とは対照的に灯至は堂々と砂利道を歩いた。男前が男前なことをするのに理由がいるか?と言わんばかりだ。
 砂利道を抜けたというに灯至は何かの罰のようにいつまでも粧子を下ろしてくれなかった。抱き上げられている粧子を見た住職は破顔した。

「なんとまあ、仲睦まじい夫婦だ!!」

 住職の笑い声はいつまでも境内に響いた。

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