ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
次の週の火曜。粧子は記念すべき初出勤の日を迎えた。
「ひら……槙島粧子です。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
店名が印刷されたエプロンを着用し、まずは接客担当の栞里から一通りの仕事の説明を受ける。
粧子は週三日、火木金曜日の十一時から十四時までの三時間、接客補助を担当する。
真っ先に覚えなければならないのはサンドウィッチの種類と価格だ。店頭には常時十種類のサンドウィッチに加え、季節限定のものがニ種類。
今は夏らしいみかんの生クリームサンド、牛カルビのご馳走サンドの二種類だ。
同じ接客業でもヒラマツとは勝手が違い、最初のうちは戸惑ったが、働き出して二週間が経つ頃には徐々に慣れてくる。
「ありがとうございました」
粧子はレジカウンターからお礼を言い、店内にいる最後の客を送り出した。お昼時は行列が絶えないというのは本当で、お客は次から次へと雪崩れ込んできた。これまでよくぞ一人でやってこられたものだと感心してしまう。
「もう完璧ですね。レジの操作もすっかり覚えてしまったし」
「いえ、そんなことないです」
栞里は妹の麻里同様、気さくに話しかけてくれる。年齢も同じ、長年同じ街で商売をしているもの同士、通じ合うところあり、すっかり打ち解けた。