ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい


「すぐにご用意しますね」
 
 粧子は注文を受けると持ち帰り用の手提げの紙袋を用意し、サンドウィッチとコーヒーを手際よく詰めていった。バランスよく詰めないと袋の中で傾いてしまう。最初のころはコツが掴めず苦戦していたが、今は慣れたもの。
 粧子が注文を聞き、商品を引き渡す準備をしている間に栞里がお会計を済ませる。
 この二週間で鍛え上げられたコンビネーションを見事に発揮し、スムーズに果歩に商品を渡すことができた。
 果歩の注文が済んだら、次はジローの番だ。

「今日も食べていかれますか?」
「ああ、コーヒーとコロッケサンドひとつ」
「はい、かしこまりました」

 ジローは毎日イートインスペースで食事をして行く。粧子はトレーにコーヒーとコロッケサンドを乗せた。お会計は栞里が済ませているはずだが……。

「栞里、今日は遅くなるから先に寝てていーぞ」
「ううん。待ってる」

 粧子はトレーを持ったまま、しばし待ちぼうけを食らった。とてもじゃないが割り込めない雰囲気だ。
 二人が同棲中の恋人同士だということは麻里から聞いてはいたが、事前に聞いていなくとも一目瞭然だった。
 エアコンは効いているはずなのに、見ているこちらの方が熱くなってくる。

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