ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
「あ、れ……?」
夢から覚めた粧子はベッドからむくりと起き上がった。額に手をあてる。頭はぼーっとしているが、熱は少し下がったようだ。
「起きたか?」
ベッドの傍らに置かれた椅子には灯至が座っており、寝込む粧子の様子を見守っていてくれていた。
「SAWATARIには連絡しておいた。もう少し休め。粥でも食べるか?家政婦に作っておいてもらった」
「はい……。いただきます……」
そう答えると灯至はキッチンへと向かった。お粥を温め直すだけなのにキッチンからは何やら大きな音がする。槙島のお坊ちゃんをキッチン立たせたなんて、姑に知られたら大目玉を食らいそうだ。
「待たせたな」
「ありがとうございます」
十分ほど経つと、盆を持った灯至が部屋に戻ってきた。盆の上にはお粥以外にも、梅干しと佃煮が添えてあった。
「一人で食べられるか?」
「食べられないって言ったら食べさせてもらえるんですか?」
心配されていることがおかしくて、ついからかってしまう。冗談半分だったのに灯至はスプーンを持つと、ふーふーと息を吹きかけお粥を冷ましてくれた。
「ほら」
ひねくれ者の灯至の優しさのおかげか、寂しさがどこかに吹き飛んでいく。差し出されたスプーンを咥え、お粥を喉に流し込む。とろりとした生温かい感触に心とお腹が満たされていく。