ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい


「あ、れ……?」

 夢から覚めた粧子はベッドからむくりと起き上がった。額に手をあてる。頭はぼーっとしているが、熱は少し下がったようだ。

「起きたか?」

 ベッドの傍らに置かれた椅子には灯至が座っており、寝込む粧子の様子を見守っていてくれていた。

「SAWATARIには連絡しておいた。もう少し休め。粥でも食べるか?家政婦に作っておいてもらった」
「はい……。いただきます……」

 そう答えると灯至はキッチンへと向かった。お粥を温め直すだけなのにキッチンからは何やら大きな音がする。槙島のお坊ちゃんをキッチン立たせたなんて、姑に知られたら大目玉を食らいそうだ。

「待たせたな」
「ありがとうございます」

 十分ほど経つと、盆を持った灯至が部屋に戻ってきた。盆の上にはお粥以外にも、梅干しと佃煮が添えてあった。

「一人で食べられるか?」
「食べられないって言ったら食べさせてもらえるんですか?」

 心配されていることがおかしくて、ついからかってしまう。冗談半分だったのに灯至はスプーンを持つと、ふーふーと息を吹きかけお粥を冷ましてくれた。

「ほら」

 ひねくれ者の灯至の優しさのおかげか、寂しさがどこかに吹き飛んでいく。差し出されたスプーンを咥え、お粥を喉に流し込む。とろりとした生温かい感触に心とお腹が満たされていく。

< 97 / 123 >

この作品をシェア

pagetop