ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
どういう……こと……?
遺産とか予定通りとか、粧子には訳がわからなかった。本来、粧子には大叔母の遺産を相続する権利はないはずだ。……孫だと名乗り出ない限りは。
「そう。貴方が決めたなら私は従うだけね……」
純夏はそう言うと、艶かしく唇を舐めながら灯至の膝の上に跨った。タイトスカートが捲りあがり、引き締まった太腿が露わになる。
「ねえ?奥様、今寝込んでいるんでしょ?どう?久しぶりに私と……」
灯至の胸に手を置きしなだれかかる純夏を見て、粧子の心臓は凍りついた。やめてと心が悲鳴をあげる。
「お前とは終わった関係だ。邪魔だ。用件が済んだらさっさと帰れ」
粧子の願いが届いたのか、灯至は純夏の腕を掴み引き剥がした。あからさまに邪険にされた純夏は不機嫌そうに眉を吊り上げると、バッグを肩にかけた。
「……お邪魔しました」
純夏がこちらにやって来る気配を感じとり粧子は咄嗟に廊下の角に身を隠してやり過ごした。
盗み聞きをしていたことを悟られないように自分の部屋に戻ると、頭から布団をかぶる。灯至と純夏のただならぬ雰囲気も気になるが、今はそれよりも……。
灯至さんは最初から秘密を隠し通すつもりなんてなかったんだわ……。
灯至が秘密を守る気がないということに粧子はひどく打ちのめされていた。