あの花が咲く頃、君に会いにいく。
突然横からぬっと誰かが顔を覗き込んできて、あまりにも驚いて思わずのけ反る。



「びっ…くりした…。なんだ、天使様か」


「なんだ、とはひどいなー。なんか思い詰めてるようだけど、大丈夫ー?」



心配してくれているのだろうけど、あっけらかんとした他人事のような言い方に、なぜか少し気が緩んだ。


そのことにより、心の内にあった想いがぽつりぽつりと漏れ出した。



「現世に戻れば記憶が戻るかも、と思ったのに…何もわからないの。何もわからないってこんなにも虚しいんだね。やっと見つけた未練の手がかりになる、友達だと思った人たちは、私のことを友達なんて思ってなかったみたいで…。何があったのか思い出す必要があるのに、記憶を取り戻すのが、少しだけ怖い」



怖いなんて思っている場合でもないし、思う資格なんて私にはないのに、それでもどうしても怖いと思ってしまうんだ。



失った記憶を本当に取り戻していいのか?


もしかしたら、思い出すべきではないのかもしれない。



もう失うものは何一つないっていうのに、傷つくのが怖いと思ってしまう自分がいる。



「ふぅん。怖い…ね。直感的にそう感じるってことは、本当にその通りなのかもね。でもさ、仮にそうだとして、思い出すことを諦めるの?未練解消はしない?」


「それ、は…」


「正直さ、君はとても運がいいよ。記憶がない状態で現世に戻って、たまたま霊感の強い少年と出会ってその子が協力してくれるなんて。こんなこと滅多にないんだからね?これで希望がゼロに等しかった未練解消ができるかもしれないっていうのに、君は諦めちゃうの?」


「…それは、嫌だ。悪霊になんてなりたくないし…」


「それならやることは一つしかないでしょ。うじうじするのもいいけど、そんな時間があるなら少しでも何かできることをするべきだと思うけどなー。記憶なんて何かのきっかけですぐ思い出せるって。ね?」
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