あの花が咲く頃、君に会いにいく。
楓は隣をふわふわと浮かびながら移動する私をちらりと一瞥し、「ああ」と短く返事をした。



沈黙が訪れ、それ以上何も言うつもりはなさそうだったから私もあえて何も聞かなかった。



「あら楓くん。ちょうどいいところに。新しいお花を出そうかなって思ってたところだから、着替えたら手伝ってくれる?」


「わかりました」



鉢植えを両手にちょうど表に出ていた楓の叔母さんが、楓に気づきぱっと笑顔になった。


楓はそのまま奥に入っていき、私は特にすることもなく叔母さんの行動を隅っこで観察する。



叔母さんは鉢植えをきれいに並べてからじょうろで水を上げていた。


その横顔は我が子を見守るような優しい顔で、花が本当に好きなことが見ていて伝わってくる。



叔母さんが全ての花に水を上げ終わる前に楓が奥から出てきた。


エプロン姿の楓がなんだか面白くて思わず吹き出してしまうと、じろりと軽く睨まれた。



「…あら?楓くん、なんだか顔色悪くない?ちゃんと食べてるの?」


「そうすか?ちゃんと食べてますよ。多分普段話さないクラスメイトと今日は結構話したから、少し疲れただけです」


「そうなの?クラスメイトと話すことはいいことじゃない。よかったわあ、楓くんが学校楽しそうで」



楓は曖昧に返事をしてから、黙々と手を動かしていた。


…きっと、私のために色々事情聴取をしてくれていたからだ。



楓がどんな人なのかまだあまりわからないが、学校で人といるところを見ない限り、一人が好きなんだと思う。
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