あの花が咲く頃、君に会いにいく。
私は死んでいて何もできないから、楓に負担をかけてしまっていることが申し訳なかった。



表に出てきた楓が、顔に思っていたことが出ていたのか、でこぴんをする仕草をして「気にすんな」と言ってきた。


痛みなど感じなかったが、おでこがほんわりと温かくなった気がした。





お店の時計が午後七時を過ぎうつらうつらとしていた頃、やっと仕事の終わった楓が叔母さんに軽く挨拶をして出てきた。



「俺、これからコンビニのバイトもあるから、早乙女は先に帰ってろ」



家に帰るのかと思いきや、スマホをいじっていた楓が振り返ってそう言ってきた。



「え?まだバイトあるの?」


「バイト三つ掛け持ちしてんだよ。多分帰るの十時過ぎになると思うから、適当に寝てろ。死んでるから飯の心配しなくていいのは楽だな」



楓は私の頭をぽんぽんと叩いて(フリだけど)コンビニのバイトに行ってしまった。



残された私は楓の家に直行する気分でもなく、少し夜の街を歩くことにした。


夜の住宅街はあちこちの家からいい匂いや賑やかな声が聞こえてくる。


一人で歩いているとなんだか無性に寂しくて悲しくなってくる。



駅の方はもっとうるさそうだから行くのはやめて、大人しくもう楓の家に帰ろう。


そう思い、踵を返した時だった。



「…ん?」
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