死グナル/連作SFホラー
畳の下③
元不動産業:安原鈴絵の場合




『…若奥さんにはさりげなく、理由を尋ねた。俺もね。そしたらさ、当時の店を仕切っていた大旦那…、つまり義理の父からの言いつけなのでって…。昔から、そこだけは決して手を加えなかったそうなんだ。表替えも一切ね。まあ、そうなると、さらにどうしてとなるよね。俺はそれをさし使えなければ…、という程度で聞いてみた。若奥さんとしても、当然畳屋が入れば、そのことを聞いてくるのは予想してたみたいで、要は主人と相談してみるからということになってね。結局、その答えは作業に入った後日、ご主人である若旦那から話してもらったよ』


「それで、その1枚の理由はなんだったんですか?」


今度は私、せっつくようにその理由を小原さんに聞いていました。


***


『…実は、当時痴呆症の気があって、病院に入っていた大旦那…、仮にここではAさんとしよう。そのAさんがまだ若い時分にその畳の裏に保管していたお金がさあ、そのままになっていて、父親からは頑なに畳を開けてはならぬと厳命されていたんだそうなんだ。長い間、ずっとね…』


そうなれば…、ここでもまた、それはどうしてとなる訳です。
小原さんは若旦那からそれも話してもらったのそうなのですが…。
それは、まさに気分が滅入る、耳を塞ぎたくなるような実に不快極まる経緯でした。


***


金物店を商っていた、大旦那…、そのAさんは本業の傍ら、鑑定業も趣味のレベルでやっていたそうです。
ところが、このAさんは、いつの間にか鑑定の延長で”運命鑑定”にまで手を突っ込むようになったそうです。


そしてやがて‥、驚くべき運命鑑定を取り扱うことになりました。
なんと、Aさんが運命鑑定を行った”品物”とは、財布に入っているお札だったのです…。




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