錆びきった鐘は
スマホの重みを感じた瞬間、さっきの右手が握られた。


今度は、手首じゃなくて手の平だった。


どくり、と心臓が脈打つ。それが痛くて、久しぶりに感じる甘さがあった。




「今日はー、クリスマスイブということで。空が、暗くて明るいね」




手を繋いだことなんてなんてことなかったかのように空を見上げて変なことを言い出す皆城くんの顔が、イルミネーションの光に照らされる。


こんな、手を引っ張ってどこかへ連れてかれることに懐かしさを覚える。
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