身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「貴様、俺の妻になにをしていた!? 言ってみろ!」
「ぐ、はっ……」
胸ぐらを掴んで捻りあげている男性は苦しそうに目をギュッ瞑り、掠れた声で「すみません! すみません!」と早々に白旗を上げた。苛立ちをぶつけるように、貴仁さんは彼を乱暴に地面へと解放する。そしてすぐ、膝から崩れ落ちた私と目を合わせ、「怪我はないか、香波」と背中を支えてくれた。
「貴仁さんっ」
初めてのことで怖かった。迫られているときも足がすくんでいたが、こうして安堵に包まれると貴仁さんに体を預けて力が抜けていく。抱きしめる腕が頼もしく、そこへ顔を埋めた。
「ぼ、僕は悪くない……香波さんが、望まない結婚をさせられて可哀想だったから……僕が幸せにしてあげたかっただけで……」
男性は腰が抜けて動けないのか、座り込んだまま苦しそうにつぶやいた。
望まない結婚、たしかに最初はそうだったのかもしれない。それでも今は違う。誰かにこの結婚を可哀想などと言われる方
がずっと嫌だ。言い返したいが、先程のショックで言葉が出てこない。