身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

「ならもっと早く行動すべきだったな。香波は多くの男が狙っている。いつまでも誰にもとられずに眺めていられると思ったのか」

「僕は、強引なやり方はしないっ……政略結婚で丸め込むなんて」

「先を越された後になにをわめいても遅い。香波の夫は俺だ」

「くそっ……! 香波さんは!? 好きでもない男と結婚して、それでいいんですか!?」

私に直接質問が投げられ、貴仁さんは抱きしめる力を強めて私を隠した。しっかりと否定したかったが、今はショックで男性と口論する気力がなく、腕の中で「好きじゃないなんて言ってない……」とつぶやく。腕の力が強まり、さらに貴仁さんと密着する。

「戯れ言を聞く時間は終わりだ。身分証を出せ」

貴仁さんの声は凄みを増し、男性は息を呑んでいる。「も、持ってない」となおも言い訳を続けており、今にも立ち上がって逃げていきそうだ。

「もう一度だけ言う。身分証を見せて消えろ。二度と香波の前に現れるな。それができないなら、俺の持つすべての権限で貴様を潰す」

貴仁さんはどんな顔をしているのだろう。こちらからは見えない。男性が小さく悲鳴を上げ、震えながらすぐに財布を出した。

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