身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

貴仁さんは連絡先などいくつか個人情報を聞き出し、その後謝罪の言葉があってから男性を解放した。警察を呼ぶか私に確認したが、男性がシーナ製紙の社員であり、やりすぎた部分はあったものの後をつける行為は今回だけだったことから、私は通報はせず社内に報告するに留めたいとお願いした。貴仁さんは厳しい顔をしていたが、私の意見を呑んでくれることになり、ひとまずここでの騒ぎは一旦終えた。

貴仁さんとともにやっとマンションへ戻った。彼に支えられながらソファへ身を預けると、一連の緊張感から解放されてどっと疲れが襲ってくる。

「……貴仁さん、すみませんでした……」

家での仕事中に呼び出してしまった申し訳なさから、謝罪の言葉がこぼれた。いろいろな感情が混ざり合って胸がいっぱいだ。恐怖はもちろん、自分のことに無頓着すぎた情けなさや、狙われていたという事実への戸惑い、貴仁さんが来てくれたときの大きな安心感だとか、いろいろだ。

花純を守るなんて言っていたけど、私は自分の身も満足に守れていなかった。貴仁さんがいなければ、今頃どうなっていたのだろう……。思い出してゾッとしていると、隣に座りった貴仁さんにゆっくりと抱き寄せられる。

「貴仁さん……?」

首筋に額を押し当てられ、息が鎖骨にあたってドキリする。

「こんなに恐ろしかったことはない」
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