身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

「わ、わかったならいい。疲れているだろう。少し休もう。……俺も少し頭を冷やしてくる」

「……冷やすって?」

赤くなった貴仁さんの顔を見れば、彼がなにを冷ましたいのかはわかる。それでもさらに体を当てる。

「か、香波」

「貴仁さん……」

ゴクリ、という音がする。貴仁さんは目を泳がせながら距離をとった。

「俺がなにか食事を用意してこよう。白米を煮るくらいなら、なんとか…」

「まだお腹すいてません」

離れた腕に擦り付くようにして頭を振る。きっと貴仁さんは、つい先程怖い目にあったばかりの私に手を出してはならないと遠慮しているのだ。まだ私は告白の返事をちゃんとしていないし。迫れるタイミングではないと抑えているが、彼は獣のように滾る瞳を隠せていない。

「貴仁さんが来てくれて、うれしかったです」

私も、溢れてくる気持ちをもう隠せそうにない。

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