銀色ネコの憂鬱
「もう少し大人かと思ったけど、年相応にまだまだガキだね。」
「は…?」
「川井から何度か、君の個展のおかげで仕事を続けられたって聞いてたけど、そんな君が川井の仕事も奪いかけたってこと、本気で反省しなくちゃダメだよ。一澤“くん”。」
「……悔しいけど、なんも言えねーし…明石さんにそう言われるのが一番クるよ…」
明石は菫にとっては今でも憧れの存在だ。
「川井は君のことは全く悪く言わなかったよ。自分が週刊誌を持って行ったのが悪い、自分が連絡しなかったのが悪い、そんなことばっかり。契約がある君の立場をちゃんと理解してる。君よりずっと大人だよ。」
「………」
「君が言ってたように、無防備で危ういところがあるけど裏表がなくて真っ直ぐな子だから、彼女と付き合うなら…川井が自分を責めてしまうような行動はしないで欲しい。」
「はい。」
「本当は俺が一発殴りたいくらいだし、契約解除してやろうかと思ったくらい腹が立ったけど、残念ながらプチフルールと同じくらい売れちゃってるからそうもいかないんだよな…」
明石は苦笑いした。
「明石さん」
蓮司は立ち上がった。
「本当にすみませんでした。」
明石に深々と頭を下げた。
「その謝罪は川井の分まで働いた営業マンのために貰っとく。俺からは、これからも良い絵を描いてくださいとだけ言っとくよ。今後ともよろしくお願いします。」
< 80 / 101 >

この作品をシェア

pagetop