銀色ネコの憂鬱
その日の夜
蓮司は自分の腕の中で眠る菫を愛おしそうにみつめていた。
「ん…」
菫がゆっくり目を開けた。
「わたし…寝ちゃってた…?」
「うん。」
「なんかすごく眠くって気怠(けだる)いの…昼間いっぱい泣いちゃったからかな…」
「それだけ?」
蓮司がいたずらっぽく笑って言う。菫の顔がまた赤くなる。
「そういうこと言わないで…」
「ごめんごめん」
蓮司は菫の頬を指の背中で撫でた。
「でも、こういう表情(かお)は俺しか知らないトクベツな表情(かお)だから。」
菫は照れ臭そうな顔をした。
「そういえば、話があるって言ってなかった?」
「あ、そうだった。ねえ蓮司」
「ん?」
「個展…やらない?」
「………」
「…もう大丈夫かなって思ったんだけど…」
菫は少し不安げな顔をした。
「………」
蓮司は菫をみつめながらしばらく無言で考えた。
「…スミレちゃんが見たいならやろうかな。」

菫の表情がパッと明るくなるのを見て、蓮司は微笑んでまた菫の頬を撫でた。
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