契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
悠介への恋心はとりあえず横に置いておこう。割り切ろう……なんて、思ったところで、感情はそう簡単に整理できるものではない。
一度意識した時点で、今まで通りに接するなんてまず無理な話なのだ。しかも、恋愛経験がゼロの私には余計に。
「えっ、な、なに……?」
昨日、母親とあんなやり取りをしたため、襲撃を危惧した悠介は、私がバイトを終える時間に合わせて店まで迎えに来てくれた。
ニヤニヤ顔の蘭に送り出され駅までの道を歩き出したとき、悠介が急に手を繋いできたので驚いて見上げると、彼は不思議そうに片眉を上げた。
「なにって、外では夫婦に見えるようくっつくって話だっただろ」
「あ……そっか。ごめん」
視線を感じるからと、そういう話になったんだった。
私からお願いしたことを思い出し、謝ったあと続ける。
「でも、もう実家の件は悠介のおかげで解決したし、外だからって周りの目を気にして無理にくっつかなくても大丈夫だよ」
悠介だってくっつきたくてくっついているわけではないのだから、無理させるのは忍びないしなんだか悲しい。
それに、今となっては私的にもくっつくのは少し問題がある。こんなにドキドキした状態では、必要に駆られた場合でも上手に夫婦を演じられる気がしない。
なのに悠介は、「もう慣れた」と言い、握る手に力を込めた。