契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「ただ、あちら側にそこまでの知識がなければ書面を交わしたという事実で押さえつけられる。それに、今後どう転ぶかはわからないが、念書を書かせておいてこちらに不利に運ぶことはないし、とりあえず一手目としては悪くないと考えただけだ」
「え……ってことは、悠介はあれで終わるとは思ってないの?」

私としてはあれで解決して、縁はしっかり切れたつもりでいた。
なのに悠介の口ぶりはそうじゃないと語っているので慌てて聞くと、彼がこちらを向く。

その瞳には心配が浮かんでいた。

「悪い。不安にさせるつもりはなかったんだ。もちろん、これで終わる可能性だって十分ある。だから、最初に言った通り、あくまでも念のためだし……それに、俺がただ単におまえを心配して動いているだけだ。だから、俺の仕事だとかは気にしなくていい」

昔と再会してからとで悠介が変わった部分は、こういうところだと思う。

昔は、私も家の事情なんて話していなかったし、よくも悪くも明るい話題しかしていなかった。
だからいつもからかったりからかわれたりして、笑って、不貞腐れて……ってしていだけだったけれど、再会してからの悠介は素直に私が心配だと口にするし、気にしなくていいと優しい言葉もくれる。

きっと、昔の悠介の態度や言葉の裏にもそういう優しさは隠されていたんだろうなと思うと、思い出全部ひっくり返してひとつひとつ確認したくなった。

上辺の軽口にいちいち反応するだけだった単純な自分が情けなくて悔やまれる。

「そういえば、姉さんから新作の服を送ったって連絡があった」
「えっ、いや、嬉しいけど……なんかもう一生かかっても返せないくらいの恩をもらってる気がする」
「柚希が受け取って着ればそれで満足なんだろ」
「新しい部屋探すとき、クローゼット大きいところにしなくちゃ」


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