もう一度、重なる手
「ごめんなさい。ひさしぶりに会うのに、私ってばおせっかいだよね」
恥ずかしくなってうつむくと、アツくんが笑いながら首を横に振る。
「いや、そうじゃなくて。変わってないなーって思って嬉しくなっただけ」
「変わってないって、私が?」
「そう。フミは昔から、本を読むのが好きだったでしょ。出会ったばかりの頃のフミは、人見知りで俺となかなか目も合わせてくれなくて。でも、読んでいた本のことを訊いてみたら、急に目をキラキラさせて饒舌になって。小さい頃のフミ、ほんとうに可愛かったよね」
アツくんが昔をなつかしむように目を細めて、ククッと笑う。
私の中のアツくんのイメージが十四年前の高校生のときの姿のままで止まっていたのと同じように、もしかしたらアツくんの中の私のイメージも十四年前の小学生のときの姿のまま止まっているのかもしれない。
だとしたら、今こうして大人になった姿でアツくんと向き合っていることが少し恥ずかしい。
二十四歳になった今の私は、アツくんのイメージの中にある可愛い妹ではなくなっているだろうから。
「ところで、フミのお母さんは元気にしてる?」
クスクスとしばらく笑ったあと、アツくんはコーヒーを口に運びながら、世間話するみたいに訊ねてきた。
「最近はあまり頻繁には連絡を取ってないけど、元気だと思う」
「お母さんとは別々に暮らしてるの?」
「大学を卒業するときに家を出たの。お母さんも、付き合ってた人との同棲を考えてたみたいだから、それで……」
そんな話をすると、アツくんが微かに眉根を寄せた。