もう一度、重なる手
「手紙を見たときフミのお母さんに呆れはしたけど、それで不快になったりフミのことを嫌いになったりなんかしないよ。俺にとって、フミはずっと大切な存在だったんだから」
アツくんが昔と変わらない優しいまなざしで微笑む。
大切な存在。私にとっても、アツくんはずっと大切な存在だった。
だけど、かっこいい大人の男性に成長したアツくんに愛おしそうな声で「大切」なんて言われると、ドキドキして、なんだか体中がむずがゆくなる。
それから、私たちはお互いにいろいろなことを話した。
これまでの私と母がどんなふうに暮らしてきたかや、母と別れたあとの二宮さんのこと。仕事のこと。それから、恋愛の話も少し。
アツくんは仕事が忙しくてここ一年ほどは恋人がいないらしいが、私には付き合ってそろそろ一年になる恋人がいる。そのことをアツくんに話したら、「小学生だったフミに、今はもう彼氏ができてるなんて」とものすごく感慨深げな顔をされて恥ずかしかった。
離れていた十四年の時間を埋めるには、いくらあっても時間が足りず。カフェで二時間以上も話してから、私たちはようやく席を立った。