もう一度、重なる手
◇◇◇
布団の中で寝返りを打ったとき、足先に何かが触れて目が覚めた。
目を開けると、鼻先が今にもくっつきそうなくらいの距離でアツくんが寝ていてドキッとする。
アツくんとはもう何度か一緒に夜を過ごしているのに、目覚めたときに彼がいる状況にはなかなか慣れない。
スヤスヤと気持ちよさそうに眠っているアツくんの顔を見つめながら、はぁーっとため息を吐く。
抱かれているときは、いつも頭が真っ白になって全部がアツくんでいっぱいになって、照れや恥ずかしさを感じている余裕なんてないのだけれど。
目覚めて冷静になると、ずっと兄のような存在だったアツくんの《男》の顔が鮮明に思い出されて、恥ずかしさが千倍くらいの大きさに膨れ上がって攻めてくる。
「朝から大きなため息吐いて、どうしたの?」
クスリと笑う声にハッとする。いつのまにか、眠っていたはずのアツくんが私のことを見ていた。
「いつ起きたの?」
「フミに足を蹴られたときかな」
寝返りを打ったときにあたったのは、アツくんの足だったらしい。
「蹴ったってほどの強さじゃなかったと思うけど……」
むっと頬を膨らませると、アツくんが私をククッと笑う。たぶん、揶揄われている。