もう一度、重なる手
「おかえり、史花」
少し目尻の上がった翔吾くんの二重の目。その双眸は、あるはずもない私の隠し事を突き止めようと鋭い光を放っていて。ほんの少し怖かった。
けれど、下手に怯えた様子を見せれば、翔吾くんに余計な疑いをもたれてしまう。それがわかっているから、私は鈍感なフリをして彼に微笑みかけた。
「来るなら連絡くれたらよかったのに。ごはんはもう食べた? 簡単なものでよければ何か作ろうか」
リビングのドアの前に立ちはだかる翔吾くんを躱してキッチンに進もうとすると、彼が私の手首をつかんで引き留める。そのまま背中から抱き込むように引き寄せられて、思わず肩がビクリと震えてしまった。
「どうしたの?」
胸の前で交差した翔吾くんの両腕。そこにそっと手のひらで触れると、彼が私の肩口に頭を寄せてきた。
「早く仕事が終わったから、会いたくて。史花はずいぶんと帰りが遅かったんだな。どこか寄ってきたの?」
耳元で聞こえた翔吾くんの探るような声に、一瞬答えに詰まった。
適当に残業だったと答えておけばいいのかもしれないけれど、万が一にもウソだとバレたら……。