もう一度、重なる手

「大丈夫? ひとりで病院まで行ける? 俺も付き添おうか?」

 アツくんは、私が母のことで動揺しているのではないかと気にかけてくれたらしい。アツくんの優しい気遣いに、思わず胸がきゅっとなった。

「ありがとう。でも、ひとりで大丈夫だよ。私、お母さんにアツくんと再会したことをまだ話してないから。アツくんのこと見たら、お母さん、ビックリすると思う」

「そうか。じゃあ、せめて病院の前まで車で送ろうか? フミの家の住所教えてくれる?」

 アツくんの言葉に、わずかに心が揺れた。今から炎天下を駅まで歩き、電車で一時間揺られると思ったら、アツくんからの申し出はとても魅力的だ。

 でも……。私と母とのことに、今は無関係なアツくんを巻き込むわけにはいかない。

「ううん、大丈夫。ひとりで行けるよ」

「遠慮しなくてもいいんだよ?」

「遠慮とかじゃないよ。アツくんの家からうちまでは結構距離があるでしょ」

 なんとなくしかわからないけれど、アツくんが今住んでいるらしい街の最寄り駅から私の駅の最寄り駅までは車で20分くらいかかるのだ。

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