もう一度、重なる手
◇◇◇
昼間に翔吾くんに送ったラインには、三十分の残業をして家に帰ってからも返信がなかった。
送ったメッセージに既読が付いているから、確認はしているのだろう。
営業の仕事で日中の電車移動も多い翔吾くんは、私が昼休みにラインを送っておくと、たいてい移動の隙間時間で返事をくれる。
それがないということは。今日は忙しいのかな……。
翔吾くんのことを気にしつつ、簡単に作った夜ごはんを食べてシャワーを浴びた。
ゆっくりとお湯にあたってから出てきたところで、インターホンが鳴った。
え、このタイミングで誰? 宅配便?
髪と体を拭いて着替えていたら時間がかかるし、再配達を頼むしかないな。
インターホンへの対応は諦めて脱衣所のカゴに置いていたバスタオルで髪の毛を拭いていると、不意にガチャッと玄関の鍵が開いた。
え、何……?
シャワー上がりで無防備な状態なところに聞こえてきた音に、ビクッと肩が震える。
心臓を震わせながら広げたバスタオルを体に巻き付けると、「史花ー、帰ってる?」と聞き馴染んだ声がした。翔吾くんだ。