もう一度、重なる手
「史花がお兄さんとふたりで会ってた理由はわかった。でも、血が繋がってるわけでもないのに、史花とお兄さんは随分仲がいいんだな。いい年した兄妹が、ふつう手を握り合って話すか?」
「ふつうがどうかはわからないけど、あのときはお母さんのことで兄に相談をしていたから……」
「ふーん。その兄って人はほんとうに、史花の相談をなんの下心もなく聞いてくれてんの? 十四年も会ってなかった義理の血の繋がらない妹なんて、ほぼ他人だろ」
翔吾くんの言葉に、私はアツくんが貶されたような気がしてムッとした。
アツくんは、今も昔も変わらずに優しい。家族だったときと変わらない、慈しむようなまなざしで私を見てくれる。十四年も離れていたのに、昔と変わらない温度で私を大切にしてくれる。
アツくんと家族だった数年間が、私にとって人生で一番幸せなときだった。血は繋がっていなくても、私とアツくんにはちゃんと家族の絆があった。
何も知らない翔吾くんに、勝手な想像で私とアツくんの関係を穢されたくない。
「翔吾くんは、アツくんがひさしぶりに会った私を騙してるって言いたいの? アツくんは、血の繋がりなんてなくても私の大事な家族なんだよ」
私が不機嫌に声を尖らせると、翔吾くんが一瞬怯んだ。どちらかというと人の顔色を伺って下手に出ることの多い私が、反論してくると思わなかったんだろう。
私から視線を逸らした翔吾くんが、忌々し気に舌打ちする。しばらく黙り込んだあと、翔吾くんが「史花、スマホ出して」と低い声で指示してきた。