エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

「元気そうでよかった。もう帰るところ?」
「いや。打ち合わせで出てただけで戻るところ」
「そっか。忙しいんだね」
「まぁ、忙しいのはありがたいんだけど。最近はちょっと色々あって頭パンクしそうで」

佐藤はそう言って苦笑した。

「今、仕事で思ってもみない展開になっててさ。なんかすげぇ狼狽えてる。小山とも何度も話し合って結論出したんだけど、まだ現実味がなくて腹括れきれないっていうか。……あ、悪い、こんな抽象的に愚痴られても困るよな」
「ううん。そんなことないよ」

彼がどんな悩みを抱えているのかはわからないけれど、思ってもみない展開に狼狽え、現実味のなさにふわふわした感情を持て余す居心地の悪さはよくわかる。

瑠衣も約半年前、結婚話が出た時には同じような気持ちになった。

「考えても答えが出ない時は、突拍子もないと思った提案に流されてみるのも悪くないって私は思うよ」

父から聞かされた大和との結婚話は、平凡に生きてきた瑠衣にとって、まさに〝突拍子もない話〟だった。

大和に事務所を任せたい父の気持ちはもちろん理解できるけれど、まさか大和のあとの後継者をもうけるため、瑠衣との結婚を打診するとは思いもしなかった。

はじめて聞かされた時は驚いたし、当然断るつもりだったけど、なぜか大和からその日のうちにプロポーズされ、トントン拍子に結婚するに至っている。

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