エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
「あの頃はドラマとか漫画のイメージで、もっと情熱的で盲目な感情が恋なんだって思い込んでたんだ。でも違うってわかった。瑠衣みたいに一緒にいて楽しいって思える子じゃないと、長く付き合っていくなんて無理だ」
「ちょ、ちょっと待って。あの」
(もしかして、今、復縁を迫られてる?)
ようやく追いついた思考で弾き出したのは、思いもよらない元彼からの提案だった。
たった今『自分でも思いがけないことがうまくいったりするのってあるんじゃないかな』と言ったばかりだが、こればかりは頷くわけにはいかない。
瑠衣はれっきとした既婚者なのだ。
すぐにでも断ろうと口を開きかけたところで、それを察した佐藤は右の手のひらを瑠衣の目の前に差し出してきた。
「言いたいことはわかる。偶然再会しただけで急に復縁迫るなんて、俺も自分自身混乱してる。でもまだ断らないで。少しだけでいい、考えてみてほしい」
「あの、でもね」
「俺、これから急いで会社戻るから。これ、変わってないけど一応連絡先。じゃあ」
「あっ待って! 孝弘!」
佐藤は強引に名刺を瑠衣に押し付けると、そのまま地下鉄のホームへの階段を一気に駆け下りて行ってしまった。
残された名刺に目を落とすと『AI Mind 代表取締役社長 佐藤孝弘』とあり、電話番号も記載されている。