エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
翌日の勤務は早番だった。
朝八時にはフロントに立ち、遅番シフトだった同僚から引き継ぎを済ませてから、モーニングコール、チェックアウト業務に外線電話対応、当日宿泊者の部屋割り決めなどチェックインの準備をしていると、あっという間に昼休憩の時間となる。
同じく早番だった梓と一緒に食堂でランチを取り、フロントに戻ってくると、待ち構えていたようにヒールの音を響かせて近付いてくるひとりの女性がいた。
(井口様……)
沙良は瑠衣の胸元の名札を確認し、「やっぱり、旧姓で働いているのね」とひとり納得して呟いたあと、睨むように瑠衣を見据えた。
「あなたね、大和を日本に縛り付けている法律事務所の娘というのは」
事務所の名称と瑠衣の名札の名字が一致し、大和の妻だと確信したのだろう。
フロントカウンター越しにもこちらを威圧するオーラに気圧され、瑠衣は身体が竦んだ。
「仕事の邪魔をする気はないわ。でも大和のことで話がしたいの。勤務は何時まで?」
「大和さんの?」
夫の名前を出された途端、心臓がドキンと嫌な音を立てる。