エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
ふたり掛けのテーブル席から八人ほど座れるゆったりとしたソファ席まで百三十席ほどあるラウンジは、座席と座席の間の距離がしっかり保たれており、リラックスして落ち着ける空間だ。
しかし、今の瑠衣にはそのラグジュアリーな雰囲気を堪能する余裕はない。
ラウンジに足を踏み入れると、一番手前の角のソファ席で長い脚を組み、文庫本を片手にコーヒーを飲んでいる女性がすぐにこちらに気が付いた。
マスタードカラーのハイネックに、アンサンブルになっているニットのカーディガンを羽織り、ボトムはセンタープレスのワイドパンツを合わせたスタイルは、長身で小顔の彼女によく似合い、まるで雑誌から抜け出たモデルのように洗練されている。
大和と並んで立ったらさぞお似合いだろうと想像してしまい、ぎゅっと胸が痛む。
怯みそうになる気持ちを奮い立たせ、瑠衣はきゅっと唇を引き結び、覚悟を決めて沙良の座る席へ足を進めた。
「お待たせしました」
小さく会釈をして向かいに座り、ウエイターにアールグレイを注文する。その間に、沙良は優雅な仕草で文庫本をバッグにしまっていた。
「もしかしたら、来ないかもと思ってた」
「いいえ、お約束しましたので」
「今は私を客だと思わなくていいわ。私もあなたを優秀なホテルマンでなく、大和の結婚相手だと思って話したいの」
「かしこまり……わかりました」
ホテルマンとして認められていたのが嬉しい半面、これから話す内容に不安が押し寄せる。