エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
瑠衣が了承すると、沙良も頷いてこちらに名刺を差し出してきたので、慌てて普段使い慣れない名刺を取り出し交換した。
「井口沙良、カリフォルニアの『R&T』という法律事務所で働いている弁護士よ。大和とはこの事務所で一年間一緒に働いていたわ」
「高城瑠衣です。職場では、旧姓の如月で働いています」
「如月法律事務所、所長の娘ね?」
沙良の眉間に深く皺が寄る。大和の姓を名乗ったのが気に入らないのだろう。
所長の娘との政略結婚。そう思われているのは、眼差しや声音に含まれる棘でひしひしと感じる。
アイラインをしっかりと引いた切れ長の瞳で瑠衣を刺すように凝視し、沙良は言った。
「まだるっこしいのは嫌いだから単刀直入に言うわ。大和を返して」
まるで元々大和が彼女のものだとでも言いたげな物言いに、ぎゅっと胸の奥に爪を立てられたように痛んだ。
それから沙良は、どれだけ大和が優秀な弁護士かを熱弁する。
「あれだけの若さで、熟練のインハウスローヤー相手に渡り合える人材は他にいないわ。彼ほど頭の切れる人材をあんな小さな事務所に埋もれさせてるだなんて。宝の持ち腐れよ」
まるで法廷で相手を追い詰めるかのごとく、当時彼と一緒に手掛けた案件の話を交えながら、沙良は大和がいかにR&Tから求められている人材なのかを並べ立てる。