エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

瑠衣が唇を噛み締めたままでいると、彼女は綺麗な細い顎を上げ、見下すような視線を投げてきた。

「私なら、公私共に大和のベストパートナーになれる。一年間、濃密な時間を過ごしたんだもの。それなのにまさか政略結婚しただなんて、ひどい裏切りだわ」

真っ赤なリップを塗られた唇の端を上げ不敵に微笑む沙良は極上に美しく、同時に酷く醜く見えた。

ふたりは同僚以上の関係だったのだと瑠衣が理解したのを見計らい、沙良は「早く大和を解放して」と言うだけ言って、伝票を持って去っていく。

瑠衣は彼女の背中を見送りながら、ピルの入ったバッグをぎゅっと握りしめた。


帰宅後、瑠衣は一心不乱に料理をした。なにかしていないと、不安に押しつぶされてしまいそうだった。

沙良の言葉が頭から離れず、同じセリフが何度も脳内で再生される。

『アメリカに戻って、うちのような大手の事務所で大きな案件を請け負って活躍すべきだわ。大和だって、きっとそう望んでる』

悔しいが、彼女の言う通りだと思えば言い返すこともできなかった。瑠衣も同じことを考えたからこそ、自ら薬を飲み続けているのだ。

粗方今日の晩ごはんができたことろで、大和から【今から帰るよ】と連絡が入っていたことに気付き、今日も帰ってきてくれるのだとホッとする。

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