研がれる私/長編エロティックミステリー
カレ、阿修羅?⑥



「…石橋、じゃあ行くぞ。オレが今から合図する。そのあと10秒だ。お前がルイの心臓をそのナイフで刺さなかったら、即オレの握ってるこの日本刀は、”然るべき場所”に突き刺さってる。…では、お前の命がけらしきドン臭い愛は、この目で確かめさせてもらうぞ。さあ…、カウントダウンのスタートだ!」

来た…!!

あと10秒で、私は殺される…

石橋さんか、石神のどちらかに!

リビングチェストの上で微笑んでいた、あの女性たちと”同じところ”に、もうすぐ逝くのよ、私も…‼

私はもう、現実と幻覚が一体化してる感覚にスライドした…


***


「9‥、8…、7…」

カウントダウンはゆっくり進でく…

私は仰向けの体勢で、石橋さんからは顔を背け、そしてぎゅっと目をつぶってる

代わりに、右手でカレの肩を握ってた

それもぎゅっと…

私がようやく、まな板の鯉になれたその瞬間だった…


***


「石橋ーー!!」

高石さん…

あなたにもすまないことをしたわ

ゴメなさい…

許される訳などないけど…


***


「5‥、4‥」

もう終わりだ…!!!

私は血の臭いと、石橋さんの荒い息と、目の前が真っ暗な中、死ぬ…

あと3秒すれば…


***


「3‥、2‥」

「わーー!!」

私には感じ取ることができた

石橋さんがナイフを振り下ろしてきたと…

そうか…、私を殺すのは”こっち”のカレなのね…

と、察し悟った、その瞬間…

ブーン!という風を切る音が耳に届いた

さらに、ビュッ!ズブッ!っていう鈍い突き刺音と交錯した、”ギャー!”という石橋さんの絶叫も同時に…


***


そして当該絶叫が途絶える前には、バサッという落下音と共に、私の胸のあたりに”その何か”かが落ちてきた

すでに両目を全開にしていた私は、たった今の出来事、その”すべて”を掌握するに達していた

そのすべてを…

たった今、胸元に降ってきた、血まみれの落下物…

すなわち、石橋さんの血が噴水状態の右腕が視界に入った、その時を以って…


***


「ぎゃあ~~!!!!」

私の記憶はそこで消えた

プツリと…

ドス黒い血しぶきによって暗闇の中へと吸いこまれるように…





< 120 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop