研がれる私/長編エロティックミステリー
四人目の男②



「まずはドリンクを一杯どうぞ…」

「じゃあ、スクリュードライバーをもらおうか…」

カレ、声は意外にもつややかだったわ

そのがっしりした外見から、当然野太い声だと決めつけていたんで…

まあ、人の先入観ってのはコワいと言うか、ある意味、始末に悪いものだ

そのギャップが主観を生むわけだし


***


例えば、見た目コワモテの男が、人を思いやる何げない言葉を口にするとする

この場合、”わー、見かけによらず優しいのね!”ってことになるが、これが見るからにヤサ男なら、何らポイントアップに繋がらない

人間が等身大の優しさを売る際、悪ぶれば悪ぶるほど効果は絶大…

賢さや知恵はバカな振舞いをすればするほど、取るに足らない知識なども際立っちゃう

まあ、人間様の主観とは、かくも世の中の随所で勝手極まるいい加減なものと、まずはそうさらりと踏まえておく必要があると思う

従って、目の前の情景に涙したり感動したりは、はっきり言って主観という気分に支配された、軽薄な己のあからさまなカタチと私は解釈してるの

だが、この四人目のカレは、そんなギャップメリットを最初から放棄しているようだった…


***


「今回の”面接”はあなたで4人目。最後になるわ」

「ほう…。それで他の3人、いいのいたかい?」

「ええ。みなそれなりだったわ。事前のメールではあなたの細かいプロフィールを知らされていないので、今日はいろいろ伺わなくちゃ。まずは、お仕事ね」

「今は大型の運転手をしているが、正社員ではない。他の仕事もしてるんで、時間を拘束されたくない事情があってね」

「私も二つ仕事を持ってて、そのうち一つは特殊車両の運転なのよ。で…、以前は違う職に就いていたのね?」

「ああ、長く特殊工作部隊の雇われをやってた。海外でな」


***


「…特殊工作隊?ひょっとして、ヒットマンってこと?」

「まあ、そんなとこだ。殺しのスペシャリストと思ってくれればいい」

これは話が早い

少なくとも、この経歴だけで私のパ-トナーとしての”用”は果たせるってことだ

なら、余分なことはいい

肝心なところに入るわ






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